2026年はなぜ台風が多い? 8月は60年ぶりの10個――スーパーエルニーニョと多発の仕組みを読み解く

2026年はなぜ台風が多い? 8月は60年ぶりの10個――スーパーエルニーニョと多発の仕組みを読み解く 災害レポート

2026年9月26日時点。2026年の台風統計には速報値を含みます。

「今年は、また台風の話をしている気がする」。その感覚は、発生数を見る限り間違っていません。2026年は8月末までに23個が発生し、同じ期間の平年の約1.7倍。1951年の統計開始以降、2番目の多さです。さらに9月には台風26号まで発生し、すでに年間の平年値25.1個を上回っています。[1][2][3][4]

では、なぜ今年はこれほど多いのでしょうか。気象庁の分析は、台風の発生につながる「偏東風波動」が活発だったこと、その背景に顕著なエルニーニョ現象があった可能性を指摘しています。ただし、長年の統計を読むと「エルニーニョになれば、必ず台風が増える」とは言えません。[5][7]

今年の観測記録と過去の統計、そして研究が示す仕組みを分けて見ると、単に「海が暖かいから」という説明では見えてこない、2026年の特徴が浮かび上がります。

1.今年はどれだけ多い? 月別・同時期の数字で比較

1〜8月は平年より約7割多い

まずは、期間をそろえて比較します。「9月下旬までの発生数」と「例年の年間発生数」の比較も目安にはなりますが、どれほど多いペースなのかを知るには、同じ月までを比べる方が適切です。

2026年の月別発生数は次のとおりです。平年値は1991〜2020年の30年平均で、ここでいう発生数は、日本への接近・上陸数ではなく、北西太平洋・南シナ海で発生した台風の数です。[1][2][15]

月・期間 2026年の発生数 平年値
1月 1個 0.3個
2月 1個 0.3個
3月 1個 0.3個
4月 1個 0.6個
5月 2個 1.0個
6月 2個 1.7個
7月 5個 3.7個
8月 10個 5.7個
1〜8月合計 23個 13.5個
9月〔26日まで〕 3個 5.0個〔9月全体〕

出典:気象庁の台風統計・異常気象分析検討会資料、国立情報学研究所「デジタル台風」。9月は途中経過のため、月全体の平年値との単純な増減比較は行っていません。[1][2][3][4]

23個÷13.5個=約1.70倍。1〜8月として、平年より約7割多い計算です。特に夏の6〜8月は17個で、平年11.0個を約5割上回りました。冬から春にも発生が続き、そこへ夏の多発が重なった年といえます。[3]

なお、表に表示した月別平年値を足すと13.6個になりますが、各月の数値は小数第1位に丸められています。1〜8月の比較には、気象庁の分析資料が示す、丸め前の値から求めた13.5個を用いています。[2][3]

気象庁による2026年8月末までの台風発生数の総括。1〜8月23個、6〜8月17個、8月10個。速報値を含む。
2026年8月31日時点の台風発生数。1〜8月の23個は平年13.5個を大きく上回り、1951年以降で2番目の多さ。図中の年間欄も8月末までの途中経過です。
出典:気象庁「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」(2026年9月1日)、p.3。該当ページを掲載。

8月の10個は「いつもの台風シーズン」では片づけられない

8月はもともと台風が最も多く発生する月ですが、平年は5.7個です。今年の10個は約1.8倍に当たります。単純に31日を10個で割れば、ひと月全体では約3日に1個の計算です。もちろん実際には等間隔に発生したわけではありません。[1][2]

一方、9月は26日時点で3個。年間の累計が多いからといって、すべての月が8月のようなペースで進むわけではありません。今年の多さを押し上げた中心は、夏、なかでも8月だったという時間的な偏りも重要です。[3][4]

2.過去の記録ではどの位置か――60年ぶり、11年ぶりの意味

8月末までの23個は歴代2位

気象庁の1951年以降の月別データを同じ1〜8月で集計すると、2026年を上回るのは、24個だった1971年だけです。主な年を比較すると、今年の位置が分かります。[1][3]

年 1〜8月の発生数 うち8月 年間発生数
1960年 18個 10個 27個
1966年 18個 10個 35個
1967年 22個 9個 39個
1971年 24個 5個 36個
1997年 18個 6個 28個
2015年 16個 4個 27個
2018年 21個 9個 29個
2025年 14個 5個 27個
2026年 23個 10個 26個〔9月26日時点・未確定〕

出典:気象庁の月別発生数を集計。2026年の9月分は「デジタル台風」で補完。上表は比較のために主な年を選んだもので、全期間の順位表ではありません。[1][4]

夏の6〜8月に限っても17個は歴代3位タイ。「今年は多い」は、直近の数年との比較だけでなく、約75年の記録の中でも裏づけられる評価です。[3]

8月10個は1966年以来、60年ぶり

8月に10個発生した年は、1951年以降では1960年、1966年、2026年。今年は1966年以来60年ぶりで、最多タイです。また、他の月を含めても、気象庁の月別発生数に10個を超える記録はありません。[1]

ただし、「月間最多タイ」と「年間最多」は別です。年間最多は1967年の39個で、今年の26個とはまだ差があります。39個に並ぶにはあと13個、更新にはあと14個の発生が必要です。8月までのペースが速かったからといって、年間記録の更新が決まったわけではありません。[1][4]

1〜9月すべてで発生したのは、2015年以来11年ぶり

今年は1月から9月まで、台風が発生しなかった月がありません。1951〜2025年の記録で、1〜9月のすべてに発生があったのは1965年と2015年。2026年は、統計上3例目に当たります。[1]

ここで表しているのは「毎月、少なくとも1個が発生した」ということです。9か月間ずっと台風が存在していた、あるいは日本に毎月接近した、という意味ではありません。

なお、2015年は10〜12月にも発生し、1年の12か月すべてに台風が発生しました。2026年がそこまで続くかは、これからの結果を待つことになります。[1]

3.今年の多発を生んだ「偏東風波動」と「モンスーンジャイア」

台風のもとになる、風と雲の乱れが活発だった

2026年9月1日に公表された気象庁の分析では、夏の台風が多かった主な要因として、7〜8月の偏東風波動の活発化が挙げられています。[5]

偏東風波動とは、熱帯で東から西へ進む、風や気圧の波のような乱れです。その中の低気圧性の渦や雲のまとまりが、台風の発生につながります。気象庁の今年の解析でも、夏に発生した台風の多くに、こうした波動との対応が見られました。[3]

イメージとしては、暖かい海があるだけでなく、そこで台風へ育つ「もと」が次々と現れたということです。台風を生み出すきっかけとなる大気の乱れが、今年は活発でした。

2026年夏の偏東風波動を示す時間・経度断面図。大気の乱れを示す色分けと台風の発生時刻・経度を重ねている。
2026年夏の偏東風波動と台風の発生。横軸は経度、縦軸は時間で、丸数字は台風番号を示します。西へ進む大気の乱れと、台風の発生との対応を示した図です。
出典:気象庁「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」(2026年9月1日)、p.4。該当図を抜粋・トリミングして掲載。

日本の南では、大きな低気圧性の循環も形成された

もう一つの要素が、8月前半に日本の南で形成・維持されたモンスーンジャイアです。これは、単独の台風そのものではなく、より広い範囲を占める大きな低気圧性の循環を指します。その周辺で複数の台風が発生しました。[3][5]

今年は、台風13号を含む大きな低気圧が太平洋中部から西北西へ進み、日本の南でアジアモンスーンの西風に伴う湿った空気を取り込み、広い低圧部と一体化しました。こうした大きな循環は、台風の発生だけでなく、周囲の台風の進み方にも影響しました。[5]

2026年8月前半の850hPaの解析。日本の南のモンスーンジャイアが吹き出しで示され、その周辺に台風の発生位置が記されている。
2026年8月1〜14日の大気の解析。日本の南に形成された大きな低気圧性の循環「モンスーンジャイア」の周辺で、台風が発生しました。
出典:気象庁「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」(2026年9月1日)、p.6の左図。該当図を抜粋・トリミングして掲載。

エルニーニョは、この環境づくりに関与した可能性がある

気象庁は、偏東風波動の活動度と夏の台風発生数に統計的な相関があり、エルニーニョが発生している夏には、この波動が活発になる傾向があるとしています。そこから、今年の顕著なエルニーニョが、夏の多発に影響した可能性を指摘しています。[5]

ただし、同じ検討会資料には、エルニーニョの年でも台風が必ず多くなるわけではないことも示されています。海面水温だけでなく、風の流れや大気の乱れが、実際にどう組み合わさったかが重要なのです。[3]

今年についての説明は、「スーパーエルニーニョだから台風が自動的に増えた」ではなく、エルニーニョを背景とする大気の状態の中で、台風の発生につながる波動や循環が活発だったと捉えるのが適切です。[3][5]

4.スーパーエルニーニョはどこまで進んでいるのか

8月の監視海域の水温差は、1997年を上回った

「スーパー」という呼び名だけでなく、観測値を確認してみましょう。気象庁が9月9日に発表した監視速報では、2026年春からエルニーニョが続いているとみられています。8月の監視海域「NINO.3」の海面水温は、基準値を3.4℃上回りました。[6]

これは8月として1949年以降で最大です。それまで最も大きかった1997年8月の+3.0℃を、0.4℃上回りました。今年が、顕著なエルニーニョであることは観測値にも表れています。[6]

ここでいう+3.4℃は、赤道太平洋の決められた監視海域の、その月の水温差です。世界全体の海が3.4℃暖まったという意味でも、台風の発生海域すべてが一様に3.4℃高いという意味でもありません。[6]

気象庁エルニーニョ監視速報の数値表。2025年9月から2026年8月までの値が並び、2026年8月の基準値との差はプラス3.4度。
エルニーニョ監視海域の最近1年間の値。2026年8月の海面水温と基準値との差は+3.4℃で、表の「5か月移動平均」とは別の値です。最新月は速報値です。
出典:気象庁「エルニーニョ監視速報 No.408」(2026年9月9日)、p.4の表。該当表を抜粋・トリミングして掲載。

「8月の記録」と「最盛期の予測」は分ける

同じ監視速報は、エルニーニョが冬にかけて続く見通しを示しています。[6]

つまり、次の二つは区別する必要があります。

  • 観測済みの事実:2026年8月の+3.4℃は、8月として過去最大。
  • 今後の予測:エルニーニョが冬にかけて続く見込み。

「8月として記録的だった」を、「すでに全期間で史上最強を確定した」と読み替えてはいけません。また、この水温の予測から、日本への台風の接近数や上陸数が直接決まるわけではありません。[6][7]

暖かくなる場所が変わると、風や雲の分布も変わる

今年8月は、太平洋赤道域の中部・東部で海面水温が平年より高い一方、西部では低くなっていました。日付変更線付近では積乱雲などの活動が活発で、中部太平洋赤道域の下層の貿易風は、平年よりかなり弱くなっていました。[6]

エルニーニョの影響を見るときは、海の「暖かさ」だけでなく、暖かい場所と相対的に冷たい場所の配置、それに伴う風や雲の分布の変化を見る必要があります。台風への影響も、その空間的な違いを通じて現れます。[8][9]

なお、気象庁が示す今回のエルニーニョの始まりは春です。1〜9月の毎月発生という記録のすべてを、夏の多発要因と同じ説明でまとめることはできません。[6]

2026年8月の海面水温と平年偏差を示す上下2枚の図。太平洋赤道域の中部・東部に高温偏差、西部に低温偏差が見られる。
2026年8月の海面水温(上)と平年偏差(下)。赤道太平洋では中部・東部に平年より高い海域、西部に低い海域が見られます。平年偏差の基準は1991〜2020年です。
出典:気象庁「エルニーニョ監視速報 No.408」(2026年9月9日)、p.4、図4。該当図を抜粋・トリミングして掲載。

5.論文・最新統計が示す、エルニーニョと台風の関係

最新の長期統計では「発生数が必ず増える」とは言えない

気象庁は2025年に、1951〜2021年の71年間を使い、エルニーニョ・ラニーニャと台風の関係を調べ直しています。観測期間を延長し、海面水温データや現象の判定期間の更新も反映した調査です。[7]

この調査で、エルニーニョ発生時と、どちらの現象も起きていない平常時を比べた結果は、次のように整理できます。[7]

調べた項目 エルニーニョ発生時の傾向
台風の発生数 調べた季節・7〜9月では、有意な増減は確認されなかった
日本の本土への接近数・上陸数 有意な増減は確認されなかった
発生位置 通年では南東寄り。夏と秋は南寄りになる傾向
最発達時の中心気圧 夏は低い傾向
台風としての寿命 夏は長い傾向

「有意な差がない」とは、その集計・検定では、自然なばらつきと区別できるほど明瞭な差を確認できなかった、という意味です。「エルニーニョは一切関係しない」と証明したわけではありません。

過去の統計では、エルニーニョ発生時の7〜9月は台風が少ないという有意な傾向がありました。しかし、更新後の調査では、やや少ないものの有意ではなくなっています。古い統計の結論を、そのまま現在の確定的な説明として使わないことも大切です。[7]

エルニーニョ発生時、平常時、ラニーニャ発生時の季節別台風発生数を比較した棒グラフ。7〜9月の旧統計からの有意性の変更が赤い×で示されている。
エルニーニョ・平常時・ラニーニャごとの季節別の台風発生数。1951〜2021年を使った再調査では、エルニーニョ発生時と平常時の発生数に有意な差は確認されませんでした。赤い×印は、旧統計から有意性の評価が変わった箇所です。
出典:気象庁『季節予報技術資料』第2巻(2025年)「エルニーニョ・ラニーニャ現象と台風の特徴」、誌面p.51、第5.4-1図。該当図を抜粋・トリミングして掲載。

「今年は影響した可能性」と「毎回増えるわけではない」は両立する

ここまで読むと、「今年の多発にはエルニーニョが関係しているのに、長期統計では発生数に差がないの?」と感じるかもしれません。

しかし、二つは調べている問いが違います。長期統計は、さまざまな強さや発達過程のエルニーニョをまとめて、平均的な特徴を調べたものです。一方、今年の分析は、2026年にどのような大気の状態が生じ、それが台風の発生にどう結びついたかを調べています。[3][7]

多くの年に共通する単純な法則が見つからないことと、ある年の多発にエルニーニョが寄与することは、矛盾しません。今年の数値を見て一般論を作りすぎることも、一般論だけで今年の特徴を打ち消すことも、どちらも避ける必要があります。

2018年の研究――同じエルニーニョでも「暖かくなる場所」が重要

2018年に学術誌『Journal of Climate』へ掲載された研究は、観測と数値実験を用いて、赤道太平洋のどこが暖まるかによる違いを調べました。実験では、東部よりも中部の海面水温上昇の方が、北西太平洋の台風の活動量を高めやすい結果となっています。[8]

ここで使われる指標の一つが、風の強さと活動時間を積み上げるACE(積算された熱帯低気圧の活動量)です。発生数が同じでも、強い状態が長く続けば、活動量は大きくなります。この研究は、発生数だけでは捉えられない、強さ・寿命・経路の違いも示しています。[8]

2026年の研究――温暖化した将来にも、現在の関係がそのまま続くとは限らない

2026年公表の研究では、将来の海面水温が一様に上がる場合と、赤道太平洋の中部・東部が相対的に強く暖まる場合などを、気候モデルで比較しています。エルニーニョ・ラニーニャと熱帯低気圧の発生数の関係は、海面水温上昇の分布によって変わり、海域によって反応も異なるという結果です。[9]

これは2026年の台風多発そのものを再現・検証した研究ではなく、将来の気候についての研究です。それでも、「何℃高いか」だけではなく「どこが高いか」が重要であること、過去の平均的な関係を将来へ機械的に当てはめられないことを示す知見です。[9]

6.数だけではない、2026年の台風の特徴

春から大きく発達した例、2週間以上続いた例がある

個々の台風に目を向けると、今年は春から大きく発達した台風や、長く活動した台風がありました。

4月の台風4号は、最低中心気圧905hPaまで発達し、台風として10日12時間続きました。7〜8月の台風13号は、最低中心気圧910hPa、台風としての期間は14日18時間でした。[10][11]

発生数だけでなく、一つの台風が長く存在するか、どこまで発達するかも、シーズンの特徴を表す要素です。ただし、これらの個別事例だけで、2026年全体の平均寿命や平均的な強さが歴代最高だとは判断できません。

台風15号は茨城県に初上陸し、本州を西へ進んだ

進路の特徴を象徴するのが台風15号です。8月11日20時ごろ、台風として初めて茨城県に上陸し、本州を東から西へ進みました。[3]

気象庁は、北側の勢力の強い高気圧と、南側のモンスーンジャイアの間の流れに沿ったことに加え、南下した複数の上空の寒冷渦の影響を挙げています。単に発生数が多かっただけでなく、台風を動かす日本周辺の風の配置にも特徴があったわけです。[5]

この進路を、エルニーニョなら必ず起こる動きとして覚えるのではなく、その時々の高気圧・低気圧・上空の風の組み合わせで進路が変わる例として捉える必要があります。[3][5]

2026年台風15号の経路図。日本の東から茨城県へ上陸し、本州を西へ進んだ経路と日時が示されている。
2026年の台風15号の経路。8月11日20時ごろに茨城県へ上陸し、本州を東から西へ進みました。経路や諸元には速報値を含みます。
出典:気象庁「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」(2026年9月1日)、p.9。該当ページを掲載。

多発した8月でも、日本への接近・上陸が同じ倍率で増えたわけではない

8月は10個発生しましたが、日本への接近数は4個、上陸数は1個でした。それぞれの平年値は3.3個、0.9個です。発生数の約1.8倍という増え方が、そのまま日本への接近・上陸に表れたわけではありません。[2][13][14]

気象庁の統計で「上陸」と数えるのは、台風の中心が北海道・本州・四国・九州の海岸線に達した場合です。沖縄などの島への影響は、上陸数だけでは表せません。上陸が少ないことと、影響が小さいことは同じではないのです。[2]

大雨の地域と、雨不足の地域が併存した

8月の天候も一様ではありませんでした。沖縄・奄美では台風13号、18号、20号などの影響で降水量がかなり多くなった一方、西日本では降水量が少なく、九州北部地方は8月として最少を記録しました。千葉県では記録的な豪雨が発生しています。[12]

これは、「台風の発生数が多い年だから、日本中が雨の多い夏になる」とは限らないことを示しています。台風がどこを通るか、湿った空気がどこへ流れ込むか、高気圧がどこに居座るかで、地域の天候は大きく分かれます。[5][12]

7.地球温暖化で台風は増えるのか

発生総数には、はっきりした長期的増加が確認されていない

今年の多さを見ると、「温暖化で台風が年々増えている」と感じるかもしれません。しかし、気象庁の『日本の気候変動2025』では、1951年以降の台風の発生数と日本への接近数に、明瞭な長期的変化傾向は確認できないと整理されています。[15]

これは「温暖化は台風に影響しない」という意味ではありません。台風全体の数、強い台風の割合、最も発達する場所、降らせる雨の量は、それぞれ別の指標だからです。

1951年から2024年までの台風発生数、接近数、上陸数の経年変化。各年の値と5年移動平均、平年値が示されている。
1951〜2024年の台風の発生数・日本への接近数・上陸数。年ごとの増減は大きく、発生数と接近数には明瞭な長期的変化傾向が確認されていません。この図には2026年の値は含まれません。
出典:文部科学省・気象庁『日本の気候変動2025』詳細編、第7章、誌面p.182、図7.2.1。該当図を抜粋・トリミングして掲載。

将来は「数が増える」より、強さと雨量の変化が重要

同報告書は、将来の世界全体の熱帯低気圧の発生総数について、減少するか、変わらないと予測しています。一方、強い熱帯低気圧の割合と、熱帯低気圧に伴う降水量は増えると評価しています。日本付近についても、台風の強度と台風に伴う降水量が増す見通しです。[15]

したがって、長期的な防災を考えるうえでは、台風の数が減るとしても、一つの台風がもたらす危険まで小さくなるとは限らないという点が重要です。なお、世界の発生総数や日本付近の強度・降水量の予測は「確信度が中程度」、世界の強い熱帯低気圧の割合や降水量の増加は「確信度が高い」とされており、すべての知見が同じ確かさで得られているわけではありません。[15]

今年の多発を説明する短期的な大気・海洋の状態と、温暖化が長期的に変える台風の性質は、分けて考える必要があります。現時点で参照した資料から、「今年の26個のうち何個が温暖化によって増えた」と数値を割り当てることはできません。

8.秋以降の見通しと、暮らし・防災で見るべき情報

エルニーニョが冬まで続くことと、日本に台風が来続けることは別

気象庁は、エルニーニョが冬にかけて続くと見込んでいます。ただし、これは赤道太平洋の大気・海洋の見通しであり、日本への台風の接近・上陸をそのまま予告するものではありません。[6][7]

例年でも、台風の発生は8〜9月だけでは終わりません。10月は平年3.4個、11月は2.2個、12月は1.0個で、10〜12月の合計は6.6個です。ただし、この数を今年の26個に足して、2026年の年間発生数を予報することはできません。平年値は、今後の季節にも発生があることを知るための目安です。[2]

台風の中心が遠くても、前線を通じて大雨になる

暮らしへの影響を考えるときは、進路図の中心線だけで判断しないことが大切です。台風から暖かく湿った空気が流れ込み、日本付近に停滞する前線の活動を強めると、台風の中心から離れた地域でも大雨になります。[17]

「上陸しないから大丈夫」「中心がそれたから雨も弱い」という判断はできません。旅行や屋外行事、農作業の予定を立てる際にも、台風の位置だけでなく、自分の地域で、いつ雨や風が強まる見通しかを確認する必要があります。[16][17]

予報円は、台風の大きさや被害範囲ではない

気象庁の進路図にある予報円は、予報した時刻に台風の中心が入る確率が70%の範囲です。台風の大きさを示す円でも、雨や風の影響がその中だけに収まることを示す円でもありません。中心を結んだ線に、必ず沿って進むわけでもありません。[16]

気象庁の台風経路図の説明例。2022年9月16日の台風14号の図を使い、予報円や暴風域などの意味を示している。現在の予報ではない。
説明用の過去の例/現在の台風予報ではありません。気象庁による台風経路図の見方。予報円は台風の中心が入る確率70%の範囲で、台風の大きさや被害範囲を表すものではありません。
出典:気象庁「台風情報の種類と表現方法」の台風経路図の例。2022年9月16日の台風14号を用いた説明図を抜粋して掲載。

情報を見る際は、役割を分けると判断しやすくなります。

  • 台風経路図:今後の進路・強さと、予測の幅を確認する。
  • 暴風域に入る確率:自分の地域で暴風に備える必要性や、時間帯を確認する。
  • 地方・府県ごとの気象解説情報:地域ごとの雨・風・波・高潮などの見通しと、防災上の注意点を確認する。[16]

年間の台風数は、その年の大きな特徴を知るための情報です。一方、家族の予定変更や風雨への備えは、地域ごとの具体的な予報に結びつけて判断する必要があります。

9.まとめ

2026年は、台風の発生数が歴史的に多い年です。その背景には、活発な偏東風波動やモンスーンジャイアがあり、顕著なエルニーニョが多発に関与した可能性が、公式の分析でも示されています。[3][5]

一方で、エルニーニョの強さだけから、日本への接近数や被害の大きさは決まりません。発生数、発生場所、寿命、強さ、進路を分けて捉えることで、今年の特徴と、自分の暮らしに必要な備えが見えてきます。[7][8][16]

「今年は多い」で終わらせず、「その台風が、どこに、いつ、どのような雨や風をもたらすか」へ目を向けることが、防災につながる次の一歩です。

データの扱いと参考文献

本稿の記録比較は、気象庁の1951年以降の月別台風統計を基本にしています。平年値は1991〜2020年。発生月は気象庁の統計に合わせて協定世界時(UTC)基準とし、本文の台風15号の上陸時刻は日本時間です。1951年以前を含む歴史全体の最多を意味するものではありません。[1][2][3]

エルニーニョの+3.4℃は、NINO.3海域の月平均海面水温と、各年の前年まで30年間の同月平均との差です。台風数に使った1991〜2020年の平年値や、エルニーニョの判定に使う5か月移動平均値とは区別しています。[6]

確認時点の気象庁「発生数」ページは9月17日更新のため、9月23日に発生した台風26号は、国立情報学研究所「デジタル台風」の一覧で補完しました。年内の数値や台風の諸元は、事後解析で修正される可能性があります。[1][3][4]

主な研究・分析資料

気象庁(2026)「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」および異常気象分析検討会の結果。 今年の発生数、偏東風波動、モンスーンジャイア、台風15号の経路を扱う公式分析。[3][5]

杉本裕之・丹治菜摘・西村明希生(2025)「エルニーニョ・ラニーニャ現象と台風の特徴」『季節予報技術資料』第2巻、51–53。 1951〜2021年の統計を使った気象庁の再調査。[7]

Patricola, C. M., et al.(2018)“The Influence of ENSO Flavors on Western North Pacific Tropical Cyclone Activity.” Journal of Climate, 31, 5395–5416. DOI: 10.1175/JCLI-D-17-0678.1. エルニーニョの海面水温分布と、台風の活動量・経路の関係を調べた査読論文。[8]

Xu, M., et al.(2026)“Modulation of ENSO–Tropical Cyclone Genesis Frequency Relationship by Sea Surface Warming of Different Spatial Patterns.” Journal of Climate, 39, 847–860. DOI: 10.1175/JCLI-D-25-0327.1. 将来の海面水温上昇パターンが、ENSOと発生数の関係をどう変えるかを扱う査読論文。2026年の台風シーズン自体の原因究明ではない。[9]

文部科学省・気象庁(2025)『日本の気候変動2025』第7章「熱帯低気圧(台風など)」。 台風の長期変化と将来予測の評価。[15]

#台風 #エルニーニョ #気象解説 #防災 #気候変動

  1. 気象庁「台風の発生数[協定世界時基準]」。1951〜2025年の月別値、2026年の速報値(確認時のページ更新日は2026年9月17日)。1〜8月の各年合計、1〜9月すべての月に発生した年、月間最多は本稿で再集計。資料を開く
  2. 気象庁「台風の平年値」。1991〜2020年。接近・上陸の定義、丸め処理に関する注意事項も参照。資料を開く
  3. 気象庁(2026年9月1日)異常気象分析検討会資料4「令和8年夏の台風の特徴/台風第15号の過去あまり例のない経路」。特にPDFの3〜6、9ページ。1〜8月23個、平年13.5個、歴代2位を公式資料でも確認。資料を開く
  4. 国立情報学研究所「デジタル台風:2026年シーズンの台風リスト」。2026年9月26日確認。台風26号の発生は9月23日12時UTC(日本時間21時)。活動中の台風の期間・最低気圧は途中経過として扱い、本稿では発生の確認に使用。資料を開く
  5. 気象庁(2026年9月1日)「令和8年夏を対象とした異常気象分析検討会の結果について」。資料を開く
  6. 気象庁(2026年9月9日)「エルニーニョ監視速報 No.408:2026年8月の実況と2026年9月〜2027年3月の見通し」。動的に更新されるページのため、本稿はNo.408の内容に基づく。資料を開く 年月固定の保存版PDF(No.408):資料を開く
  7. 杉本裕之・丹治菜摘・西村明希生(2025)「エルニーニョ・ラニーニャ現象と台風の特徴」『季節予報技術資料』第2巻(令和6年度)、51–53。資料を開く
  8. Patricola, C. M., Camargo, S. J., Klotzbach, P. J., Saravanan, R., and Chang, P. (2018). The Influence of ENSO Flavors on Western North Pacific Tropical Cyclone Activity. Journal of Climate, 31, 5395–5416. DOI: 10.1175/JCLI-D-17-0678.1. NOAAの論文リポジトリにある本文を参照。資料を開く
  9. Xu, M., Zhan, R., Zhao, J., Wang, Y., and Wang, H. (2026). Modulation of ENSO–Tropical Cyclone Genesis Frequency Relationship by Sea Surface Warming of Different Spatial Patterns. Journal of Climate, 39(3), 847–860. DOI: 10.1175/JCLI-D-25-0327.1. 資料を開く 著者提供の公開本文を参照:資料を開く
  10. 国立情報学研究所「デジタル台風:台風202604号(SINLAKU)」。台風期間、最低中心気圧。資料を開く
  11. 国立情報学研究所「デジタル台風:台風202613号(DOLPHIN)」。台風期間、最低中心気圧。資料を開く
  12. 気象庁「2026年8月の天候」。全国の概況、地域別の降水量、台風の影響。資料を開く
  13. 気象庁「全国への接近数」。本稿では終了済みの2026年8月の値を使用し、9月途中の値とは混在させていない。資料を開く
  14. 気象庁「台風の上陸数」。本稿では終了済みの2026年8月の値を使用。資料を開く
  15. 文部科学省・気象庁(2025)『日本の気候変動2025』第7章「熱帯低気圧(台風など)」。資料を開く 詳細編:資料を開く
  16. 気象庁「台風情報の種類と表現方法」。予報円、暴風域に入る確率、地域の気象解説情報。資料を開く
  17. 気象庁「台風に伴う雨の特性」。台風からの暖湿気による前線の活発化など。資料を開く
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